所得に対してかけられる税
「所得税と住民税の納付義務があるのは知っているが、税自体についてはよく知らない」という方もいらっしゃるでしょう。会社にお勤めの場合はどちらの税も天引きされるため、どのように税額が決められているのかわかりにくいことも、税金の理解を遠ざける一因ではないでしょうか。
所得税は「国が個人の所得に対して課税する国税」です。国が課している税なので、所得税は国、すなわち税務署に納付します。
所得に応じて税率が増えていく「累進課税」が採用されています。「働きすぎると損する」という声は、この累進課税によるものです。
住民税は地方税であり、その内訳は「都道府県に納付する税」と「市区町村に納付する税」の合計です。住民税は、各地域の財政サービスの経費を負担する目的で徴収されています。
住民税は、所得に対して一律10%が課税される「所得割」と、所得に関わらず同一自治体であれば同じ額(*)が課税される「均等割」の2種類で構成されています。
*住民税の均等割=都道府県民税1,500円+市町村民税もしくは特別区民税3,500円(標準税率の場合)
所得税と住民税の納付方法は、会社員の場合と、会社員以外で異なります。会社員は所得税・住民税のいずれも給与から天引きされるため、自分で計算や手続きを行なう必要はありません。
フリーランスの自営業者や個人事業主など給与ではない形で収入を得ている場合は、所得税および住民税を自分で納める必要があります。所得税は確定申告を行い納付書で納税し、住民税は送付された納付書で手続きを行います。
では、私たちは1年間に、いったいどれだけのお金を国や自治体に払っているのでしょうか?
例えば、年収400万円のサラリーマンなら、所得税は約8万6000円、住民税は約17万4000円、社会保険料は約56万4000円です、年収の約7%にあたる約26万円を税金として納めることになります(※30歳、東京都在住、所得控除は基礎控除・社会保険料控除のみとして概算を計算)。
また、所得税は「累進課税」といって、所得があがるにつれて5%〜45%まで段階的に引き上げられていきます。年収400万円なら5%ですが、800万円なら20%になります。
これに加えて、住民税や社会保険料も、所得税ほどの上がり幅ではないものの、年収が上がるにつれて増えていきま。
そのため年収が400万円から倍の800万円になったとしても、手取りは2倍にはならず、1.9倍程度。このように高所得者になればなるほど、税金の負担比率が大きくなります。
ただし、税金は年収ではなく、給与所得から「各種控除」を差し引いた「課税所得」に対してかかるので、差し引き分の控除額が大きければ大きいほど、課税所得が下がり、かかる税金も下がっていきます。
所得税と住民税の計算方法
所得税額 = 課税される所得金額 × 税率 ー 控除額
課税される所得金額とは、給与所得から各種所得控除額を引いた金額。寡勢所得金額が400万円の場合、下の速算表に照らし合わせると、税率は20%、控除額は42万7500円となるので、所得税額は以下となる。
400万円 × 0.2 ➖ 42万7500円 = 37万2500円
民税額 = 所得割額 + 均等割額
所得割額とは前年の所得金額に応じて課税される住民税額で、税額は課税される所得金額×税率(個人住民税は原則全国一律10%)ー調整控除で計算する。均等割額とは、すべての納税義務者から均等に徴収される税金で、東京23区在住であれば令和5年まで特別区民税と都民税を合わせ5000円が課される。先述の課税される所得金額が400万円の人が、東京23区在住の場合の住民税額は以下となる。
400万円×0.1➖調整控除(この場合、2500円)+5000円=40万2500円
所得税の速算表
所得税 | 税率 | 控除額 * |
1000円〜194万9000円まで | 5% | なし |
195万円〜329万9000円まで | 10% | 9万7500円 |
330万円〜694万9000円まで | 20% | 42万7500円 |
695万円〜899万9000円まで | 23% | 63万6000円 |
900万円〜1799万9000円まで | 33% | 153万6000円 |
1800万円〜3999万9000円まで | 40% | 279万6000円 |
4000万円以上 | 45% | 479万6000円 |
*ここでいう控除額は所得控除や税額控除などとは別物。課税所得が195万円以上ある人の所得税額は単純な課税所得×税率の計算式では求められないため、上記表の所得区分に応じた控除額を減じる必要がある
年収400万円のサラリーマンなら、控除が100万円あれば、400万円ー100万円の差し引き300万円、150万円なら差し引き250万円が課税所得です。
基礎控除や配偶者控除などは、会社の年末調整で申請できますが、それ以外にも医療費控除や雑損控除など、自分で確定申告が必要な控除もあります。
言われるがまま税金を給与天引きで支払っているサラリーマンでも、この控除を有効活用すれば、ある程度の節税も可能です。
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