梅山修氏 J2新潟、配球役・高へのパス遮断時の対応を
【元アルビ・梅山チェック】ホーム開幕戦は1―1の引き分け。新潟が良くなくて勝てなかったというよりも、山口の対策が際立ったと言える一戦だった。
新潟と同じ4―3―3の山口だが、守備の際は2トップに変形して、千葉と舞行龍の2CB(センターバック)とアンカー高の3人をケアしていた。特に配球の鍵を握る高へのパスの遮断は、つまり新潟のビルドアップの遮断となった。
昨季は2CBと2ボランチの4人による安定したビルドアップが前線の厚みと活性化を支えていた。新潟は今後、アンカーへのパスコースを消された時にどのようにボールを前に運んでいくのか、この引き出しづくりは喫緊の課題と言えるだろう。
さらにSB(サイドバック)のポジショニングに悩まされた。山口のSBがタッチライン際の上下ではなく、内側のボランチのような位置を取ってきたことでマークがぼやけ、結果的にイッペイ・シノヅカと本間の両ウイングが低い位置に押し込まれた。この2点が苦戦した主な理由である。
一方で良かった点もある。山口戦で9本取ったように、今季は多くのCKを獲得している。3試合合計25本はリーグトップで、これは相手に当たってゴールラインを割ったことに加え、攻撃をフィニッシュで終われていることを示している。
昨季はボールを失わないことが目的化してしまい、ゴール前でスピードダウンしシュートまで至らないケースが少なくなかったが、シュートやクロスなどでゴールラインを割る状態、すなわち攻撃をやり切って終わることは、カウンターを受けるリスクがないという点からも大事な要素である。
また、4―3―3のシステムはドリブルやカットインなど相手に向かって仕掛けていく本間の特長を最大に引き出せる配置だし、矢村は一瞬で相手の背後を取るオフ・ザ・ボールの動きにたけており、最初のボールコントロールさえ身につければ、得点を量産する可能性を大いに秘めている。
この日の山口に象徴されるように今のJ2は戦術に優れ、組織で戦えるチームが増えていてリーグ全体のレベルは年々上がっている。世界的にもサッカーという競技の戦術的な進歩は目覚ましく、チームも個人もいわゆる過去の“実績”は役に立たない。しかし、昨季のボール保持というプロセスへのこだわりに加え、ゴールを決めるというサッカーの目的へのこだわりを強く打ち出す今季の新潟の成長には、期待が持てる。(元アルビレックス新潟DF)
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