【新潟】藤原奏哉はJ2優勝のシャーレには触らない。「J1のシャーレを掲げたいと思います。それまでお預けで」

　明治安田生命J2リーグで優勝とJ1昇格を果たしたアルビレックス新潟。10月23日の最終戦ではFC町田ゼルビアに2-1で勝って、ファン・サポーターとお祝いしたが、藤原奏哉はシャーレを掲げなかった。そこには頼もしすぎる強い思いがあった。

■2022年10月23日 J2第42節（デンカS/25,414人）
新潟 2-1 町田
得点者：（新）三戸舜介2
（町）岡野洵

「自分たちで難しい試合にしてしまった」

　アルビレックス新潟の一員となって2年。右サイドバックの藤原奏哉は押しも押されもせぬ中心選手として、出色の活躍を見せてきた。そして仲間とともにようやく、J2の頂にたどり着いた。

　すでに前節で横浜FCが敗れたことで優勝は決まっていたが、自分たちが勝ってその場で優勝を決めたわけではなかった。だから、最終節でFC町田ゼルビアから勝利を手にしたことは、大きな意味を持った。

「やっぱり違いますよね。もちろん、優勝が決まったときも喜んだけど、全員が揃って、試合に勝って決まると全然違います」

　いつもクールなその顔に、誇らしげな笑みが浮かんだ。

　優勝セレモニーでは、キャプテンの堀米悠斗に始まって、選手たちが順にシャーレを掲げて歓喜に沸いた。藤原はJ2チャンピオンの証であるこの特別な皿に、手を触れなかったのだという。

「僕、触ってないんですよ。J1のシャーレを上げたいと思います。それまでお預けで」

　心強い決意である。

　そのためには途方もない努力が必要なこともわかっている。町田戦から言えば、数多くのチャンスを逃し続けた前半の攻撃の中途半端さを指摘する。

「あれだけチャンスがあっても決めきれなかったので、追いつかれてしまって、自分たちで難しい試合にしてしまったと思います。ボールを持つところと攻めるところははっきりしなければいけない」

　2018年からの2年をギラヴァンツ北九州の一員としてJ3で戦い、J2に昇格、そこで1年を過ごし、21年に新潟に移ってJ2で2シーズン。そしてようやく、トップリーグに挑戦できる。立身出世の物語の主人公だ。

「去年に比べてゴールに向かう姿勢を出せていると思います。試合ごとに出る課題に対して自分なりに向き合って改善できて、成長できたと思います」

　その実感をかみ締めるようにしてうなずく。

　この1年は、J1昇格とJ2優勝という目標だけではなく、J1で戦えるレベルのチームを作ることを目指してきた。だからまだ、戦いは終わっていない。

「J1でやる意識は持ってきましたけど、実際にプレーするのと想像でプレーするのとはやはり違います。僕たちはいまできることを1試合1試合、出していくことをしてきたし、同じように来年も全員で戦えたらいいと思います」

　そしていつの日か、藤原と仲間たちが胸を張ってJ1のシャーレを高々と掲げられますように。