“J1出場ゼロ&代表歴なし”でもベルギー名門から1.6億円超オファー…164cm本間至恩(21)は何がスゴい? 新潟との「幸せな別れ」とは #2
「ドリブルだけの選手と思われたくない」
筆者にも忘れられないプレーがある。2018年5月、デンカビッグスワンスタジアムで行われたプリンスリーグ北信越第7節・日本文理高戦。高3の本間は2トップの一角として出場した。
ボールを持つとフィジカルに勝る日本文理の選手たちが一斉に本間を取り囲むが、決して慌てることなくボールを受けると、鮮やかな殺陣のようなキレ、そして大胆なボールタッチで突破し、チャンスを量産。2-0で迎えた74分には左サイドからカットインを仕掛けると、ノールックでダイレクトスルーパスを通して3点目の起点となった。そのプレーを当時、こう振り返っている。
「3点目はチームにとっても理想的なゴールだったと思います。仕掛けてラストパスは常に意識していて、あのシーンでは左サイドから中にカットインしたときに斜めから上がって来た味方が見えたので、オフサイドにならないようにタイミング早めに出してから、すぐに中に入って行って折り返しを自分が打とうと思いました。結果的には仲間が決めてくれたので良かったです」
この言葉を聞いた筆者は、「ゴールまでの道筋は、いくつか見えていた?」と質問した。すると本間は、澱むことなくこう答えた。
「ドリブルが得意なのですが、ドリブルだけの選手とは思われたくないんです。選択肢がないからドリブルをするのではなくて、いくつかの中からドリブルを選択しているつもりです。パスならどうなるのか、ドリブルならどうなるのか、シュートやクロスを入れたらどうなるかと考えながらやっています」
客観的に状況と手数を把握した上で、自分の長所であるドリブルを繰り出す。それは相手にとっては脅威でしかない。
「ユースの試合はプロの試合よりプレッシャーが遅いし、ボールをたくさん持てると思うのですが、ボールを持ちすぎたら相手に奪われたり、チャンスを不意にしてしまう。これではプロの舞台ではやっていけない。常に高いレベルでやる意識を持ってやっていきたいと思っています」
実はこの日本文理戦の3時間前、同じピッチでは新潟vs山形戦が行われていた。仲間たちと前半の途中まで観戦し、この試合に臨んでいたという。
ユースの試合が行われる頃には多くの人たちが帰路に着いていたが、「トップの試合を見た観客の方々がわざわざ残って僕らを応援してくれていた。凄くモチベーションが上がりました」と屈託のない笑顔を見せた。
「またあのピッチでプレーをしたいと思いましたし、やっぱり僕がいるべき場所はあそこなんだと思いました」
そんな純朴な青年は、ビッグスワンのピッチですぐに主役になる。
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