「自分がこのチームを引っ張っていく」覚悟の三戸舜介。2ゴール2アシストの5月で得た自信がどんどんふくらんでいく【J2月間MVP受賞インタビュー】
『明治安田生命Jリーグ KONAMI月間MVP』で、5月度のJ2部門を受賞したのは、アルビレックス新潟のMF三戸舜介だ。この月の6試合すべてに出場して、2ゴール2アシストと躍動。チームは首位にも立った最高の月になった。6月にはU-21日本代表にも選ばれた「三戸ちゃん」の成長は破竹の勢いだ。
「ヒールパスは体が自然に動きましたね」
――この度、J2の5月月間MVPを受賞されました。おめでとうございます。
三戸舜介 ありがとうございます。素直にうれしいですね。こういう賞をもらうのは初めてなので。プロ生活の中で連続ゴールを決めたりするのは初めてだったので、プレーの手応えはありました。
――5月は6試合すべてに出場して、そのうち5試合でフル出場、2ゴール2アシストを記録しました。
三戸 あまりいままでは得点やアシストが多くなくて、今年は結果を求めてプレーしてきたので、それが表れてよかったです。いまチームが好調ですし、それを落としたくないというか、攻撃で自分がアクセントになりたい気持ちは強かったですね。それに、90分間、出させてもらえる信頼を勝ち取れた部分はあったので、成長できたというか、プラスにとらえてもいいのではないかなと思っています。
――金沢、東京V、町田、横浜FC、水戸、山形が相手の過密日程でしたが、印象的なゲームはありましたか。
三戸 やっぱり横浜FC戦(第17節◯3-0)は印象的でしたね。開始30秒ぐらいで点が取れましたから。
――キックオフから一気に三戸選手をはじめ、複数の選手でプレスを仕掛けてボールを奪い、左に展開、同期の小見洋太選手がシュートしたボールをGKがはじいたところに詰めていた三戸選手がプッシュ、という流れでした。
三戸 セカンドボールを狙っていたので、いいところに転がってきて決めるだけでした。プレスの部分は自分は方向性を決めながら寄せていってパスを出させて、プレスバックしたらほかの選手も来ていてうまく取り切れました。狙い通りですね。
――その狙いと、実際に奪いきってしまう実行力は、今年のチームの良さですね。 三戸 守備の局面で、ああいう取り方ができたのはいいことだと思います。
――最後のシュートのシーンは、うまく大股で歩幅を合わせるようにボールに向かっていきました。
三戸 あまり歩幅のことは考えていなかったけれど、本当においしいところにボールが転がってきてくれましたから。ただ、キーパーの手が伸びてくるかな、と思って、ぎりぎりを攻めたらポストに当たって入ってくれました。
――6分には小見選手のプロ初ゴールをアシストしました。13本のパスをつないで崩しきった素晴らしいシーンで、最後はペナルティーエリアの左で星雄次選手からの横パスを受けた三戸選手が、軽妙なヒールパスで小見選手に落としました。
三戸 あの崩しはすごくよかったと思います。星選手とは目が合っていて、でもあの狭いところを通るかなと思ったんですけど、うまく通してくれました。同時に小見選手が走っているのが見えて、自分でシュートにいくのもアリだなと思いましたけど、後ろに相手もいないのはわかっていたので小見選手に出して、決めてくれてよかったです。ヒールパスは体が自然に動きましたね。小見選手にとってJリーグ初ゴールでしたし、うれしかったです。
「自分ではあまりわからないんです」
――続く18節の水戸戦(◯3-0)のゴールは、相手の横パスを自陣で狙ってカットして、そのままドリブルで独走して決めました。ドリブルしながら後ろを振り返っていましたよね。
三戸 後ろから回ってくる選手がいるかもなと思ったし、相手が後ろから来ているかな、時間をかけ過ぎたらどうしよう、と考えてちらっと見て、誰もいなかったので自分のタイミングで持っていけた感じですね。
――後ろを振り返ったことが、一種のフェイントになったかもしれませんね。
三戸 その狙いもありました。でも、後ろを向いている瞬間に取られないかと心配もありましたけど。
――右寄りのコースを取って持ち運び、シュートはニアに決めています。その直前には同じようなところからファーを狙って打って残念ながら入りませんでしたが、そのことが、結果的に「見せ球」のようになりました。
三戸 最初のシュートは練習して自信があったんですけど外れてしまって、でも次も、谷口(海斗)選手が左にいたのでこぼれ球に詰めてもらえると思ってファーに打とうとしていました。ただ、相手選手の足が見えて、ファーだったらその足に当たるかなと思ってニアに打ったんです。
――そこまで冷静に見えていたわけですね。きれいに右を突くシュートでしたが、三戸選手のシュートは膝下の振りが速く、コンパクトに振ってもパンチ力のあるボールが飛んでいきます。
三戸 それはよく言われますね。でも、自分ではあまりわからないんです。打ったらそうなるというか、自分のシュートはこういうものだと思っているので。だから、それが武器になるとは感じていなくて、普通のシュートだと思っています。
――それは意外です。ナチュラルにあのシュートが打てるとは。そのゴールのあとには、試合を決める本間至恩選手のチーム3点目をアシストしています。またもペナルティーエリア左に潜り込んで、本間選手とワンツーを決めてお膳立てしました。
三戸 至恩選手がドリブルで中に入ってくるのは見ていて分かることですし、あそこに入って至恩選手が右足で巻くシュートを普段から練習しているのを見ていたので、打ちやすいところにボールを置こうかなと。そうしたら決めてくれました。
――本間選手は左から持ち運んで縦への突破も、中へのカットインもどちらも鋭いですが、あのシーンではどちらを予測していたんですか。
三戸 あの瞬間は中に来るかなと思ったんです。直感、じゃないですけど。
――でも、それが的中したわけですね。2人のコンビネーションの良さが見て取れるシーンでした。そんな素晴らしい5月を経て、6月にはU-21日本代表の一員としてU-23アジアカップに出場、3位となりました。
三戸 国際大会を経験して、新潟を引っ張っていかなければいけない、やってやる、という気持ちはすごくありますね。代表に選ばれて自信もつきましたし、自分がこのチームを引っ張っていきたいと強く思っているところです。
――そのアジアカップの期間には、「#三戸ちゃん」がツイッターのトレンドにも上がりましたね。すごい人気です。
三戸 ほとんどがアルビレックスのファン・サポーターの皆さんの反応だと思うので、本当にありがたいです。たくさん応援してくれるなと改めて思ったし、うれしかったです。
――J2リーグは折り返し地点を過ぎ、このインタビューの時点では2位。昇格レースはさらに激しいものになっていきます。そんなファン・サポーターとともに、最後に喜びを分かち合いたいですね。
三戸 J1昇格に向けて一戦一戦、戦っていくだけです。去年は後半戦に失速したので、その反省を生かしながらチームのみんなで頑張っていきたいと思います。個人的には今季は得点とアシストで合わせて10を目標にしていて、それがかなうようにしていきたいですね。あと5点は最低ラインなので(第23節時点で3得点2アシスト)、そこを目指していきます。
Profile◎みと・しゅんすけ/2002年9月28日生まれ、山口県出身。JFAアカデミー福島のU-15、U-18でプレーして、2019年にはU-17日本代表の一員としてU-17ワールドカップに出場した。20年9月に特別指定選手としてアルビレックス新潟でプレー(試合出場はなし)、21年にプロ契約し、25試合2得点。今季は、田中達也コーチが昨年までつけていた背番号14を受け継ぎ、松橋力蔵監督の指揮の下、主力の一人として主に右サイドハーフでプレーして、得意のドリブルとパンチ力のあるシュートでサポーターを喜ばせている。第23節時点で15試合3得点。6月にはU-21日本代表としてU-23アジアカップでもプレーした。164cm、60kg。
●サッカーマガジンWeb編集部
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